Claude Coworkの公式プラグインは現在24種類。今回はData(データ分析)プラグインを取り上げ、「スキル」「コネクタ(MCP)」「スラッシュコマンド」「サブエージェント」の4つの構成要素ごとに具体的に解説します。自然言語からのSQL生成・データセット探索・統計分析・Pythonビジュアライゼーション・インタラクティブダッシュボード構築・公開前のQAまで、データアナリストの分析フロー全体をカバーするプラグインです。
Dataプラグインは2026年1月30日の最初のリリースバッチに含まれ、GitHubでオープンソース公開されています。スキル10種は全24種の公式プラグイン中で最多であり、他のプラグインがMarkdownスキルだけで構成されているのに対し、DataプラグインはPythonコードを実行するスキルを含む点が際立った特徴です。また、自社データウェアハウスの専門知識をClaudeに学習させる「自己学習スキル」を持つ唯一のプラグインでもあります。
① スキル(Skill)—全プラグイン最多の10種、Pythonと自己学習を持つ独自構成
Dataプラグインのスキルは、分析の「準備→実行→可視化→検証」という一連のフローを10種のスキルでカバーしています。なかでも注目すべきは、他プラグインにない「Pythonを実行するスキル」と「自社データ文脈を自己学習するスキル」の2点です。
- データ探索(explore-data):新しいテーブルやファイルに初めて触れるときに実行するプロファイリング手順を定義。Null率・カラム分布・重複数・怪しい値・外れ値を自動チェックして、分析前に「このデータで何ができるか・何に注意すべきか」を整理したプロファイルレポートを生成。
- SQL記述(sql-queries / write-query):Snowflake・BigQuery・Databricks・PostgreSQLなど全主要DWH方言に対応した最適なSQLを記述するルールを定義。自然言語の質問を受け取り、CTE・ウィンドウ関数・集計を組み合わせた複雑なクエリを生成。遅いSQLの最適化・方言間の変換にも対応。
- 分析実行(analyze):単一メトリクスのルックアップから多次元トレンド分析・セグメント比較・ステークホルダー向け正式レポートまで、データ質問への回答フレームワークを定義。「何がこのドロップを引き起こしているか」という探索的な問いにも、「経営層向けに数字をまとめて」という要約タスクにも対応。
- 統計分析(statistical-analysis):記述統計・トレンド分析・外れ値検出・仮説検定・相関分析などの統計手法を適用するルールを定義。「この差は統計的に有意か?」「どのセグメントが異常値か?」といった問いに対して、適切な検定手法の選択と結果の解釈まで行う。
- Pythonビジュアライゼーション(create-viz / data-visualization):matplotlib・seaborn・plotlyを使った出版品質のグラフを生成するPythonコードを実行するスキル。データの種類(時系列・比較・分布・相関)に応じた最適なチャートタイプを自動選択し、アクセシビリティ・カラーセオリーを考慮したデザインを適用。ホバー・ズーム対応のインタラクティブチャートも生成可能。
- ダッシュボード構築(build-dashboard):KPIカード・フィルター・テーブル・複数チャートを含む、ブラウザで開けるインタラクティブなHTMLダッシュボードをひとつの自己完結ファイルとして生成するスキル。経営層向けのエグゼクティブオーバービュー・チームモニタリングスナップショット・共有可能なレポートとして即座に活用できる。
- 分析検証(validate-data):ステークホルダーへの共有前に分析をQAするルールを定義。方法論の妥当性・計算の正確性・集計ロジックのスポットチェック・SQLクエリ結果の整合性確認・「データが本当に結論を支持しているか」のバイアスチェックを体系的に実施。
- データコンテキスト抽出(data-context-extractor):Dataプラグイン最大の独自機能。自社DWHのスキーマ・テーブル定義・メトリクス定義・社内独自の用語・よく使うクエリパターンをClaudeに学習させる「自己学習スキル」。
- ブートストラップモード:「我社のウェアハウス用のデータスキルを作って」と入力すると、スキーマを自動探索して主要テーブル・メトリクス定義・命名規則を調査し、会社固有のデータ分析スキルを初回生成。
- イテレーションモード:「売上ドメインの情報を追加して」「このメトリクス定義を更新して」と入力すると、既存スキルをロードして対象ドメインの質問を行い、参照ファイルを追記・更新。
② コネクタ(Connector / MCP統合)—主要DWH3種+BIツール+プロダクト分析の8ツール
Dataプラグインのコネクタ数は8種です。Financeプラグインと同様にSnowflake・Databricks・BigQueryの3大DWHすべてに対応しており、さらにHex(データサイエンスノートブック)とDefinite(BIツール)という分析特化ツールへの接続が追加されている点が特徴です。
| カテゴリ | コネクタ | ClaudeができるようになることData用途 |
|---|---|---|
| データウェアハウス | Snowflake | 自然言語で指示→SQLを自動生成→直接クエリ実行→結果を分析・可視化まで一気通貫で処理 |
| データウェアハウス | Databricks | 大規模データへのSpark SQLクエリ実行。MLflow実験データへのアクセスも対応 |
| データウェアハウス | BigQuery | Google Cloud環境のデータへのクエリ実行。パーティション・クラスタリングを考慮した最適化クエリを自動生成 |
| データサイエンスノートブック | Hex | Hexのプロジェクトへのクエリ実行・データ取得。チームで共有しているデータセットをClaudeが参照して分析 |
| プロダクト分析 | Amplitude | イベントデータ・ファネル・リテンション・コホート分析データの取得。プロダクトメトリクスの深掘りに活用 |
| BIツール | Definite | 既存BIダッシュボードのデータソースへのアクセス。Definiteで管理されているメトリクスをClaudeが参照して分析 |
| プロジェクト管理 | Atlassian(Jira) | 分析タスクのチケット管理・データリクエストの追跡・完了した分析のドキュメント化 |
③ スラッシュコマンド(Slash Command)—「質問する→可視化する→共有する」を一言で起動
スラッシュコマンドは /data:コマンド名 と入力するだけで定義済みのワークフローを即時起動できます。Dataプラグインの主なコマンドを紹介します。
/data:write-query:「先月の国別売上を月次推移で見たい」という自然言語の質問を入力すると、接続されているDWHの方言(Snowflake/BigQuery/Databricksなど)に合わせたSQL、CTEとウィンドウ関数を組み合わせた最適なクエリを自動生成してそのまま実行。クエリの説明コメントと実行計画の見どころも付記。/data:analyze:「7月に有料転換率が落ちた原因を調べて」という問いを渡すと、関連テーブルへのクエリを複数実行して原因を多角的に調査し、「コホート別の転換率差」「ファネルの離脱ポイント」「時系列との照合」を統合したレポートを生成。経営層向けエグゼクティブサマリーもオプションで追加。/data:explore-data:テーブル名またはファイルを渡すと、Null率・ユニーク数・分布・外れ値・重複を自動計算して「このデータで分析できること・注意すべきこと」を整理したデータプロファイルレポートを生成。初めて触れるデータセットの把握に要していた1〜2時間が数分に短縮。/data:create-viz:クエリ結果またはDataFrameを渡すと、データの種類に応じた最適なチャートタイプを自動選択し、Pythonコードを実行してインタラクティブなグラフを生成。「時系列トレンドをホバーで詳細確認できるグラフ」「セグメント別の箱ひげ図」などを数行の自然言語指示で生成。/data:build-dashboard:複数のKPIとチャートを組み合わせたインタラクティブHTMLダッシュボードを生成。経営層への週次レポート・チームの日次モニタリング画面・アドホック分析の共有用として、ブラウザで開ける自己完結ファイルとして出力。/data:statistical-analysis:「このABテストの結果は統計的に有意か?」「この2つのセグメントの差は本物か?」という問いに対して、適切な検定手法(t検定・カイ二乗・Mann-Whitney等)を選択して実行し、p値・効果量・信頼区間とともに結論を平易な言葉で説明。/data:validate-data:完成した分析をステークホルダーに共有する前に実行するQAコマンド。方法論の妥当性・計算ミス・サンプリングバイアス・「数字と結論の整合性」を体系的にチェックしてフィードバックレポートを生成。分析の信頼性を担保するダブルチェック機能。
④ サブエージェント(Sub-agent)—分析フェーズを並行処理する「データチーム」
サブエージェントは特定の分析フェーズに特化した権限・プロンプト・ツールアクセスを持つ独立したClaudeのインスタンスです。Dataプラグインでは、データ取得・統計処理・可視化・QAを並行して処理できるよう以下のサブエージェントが用意されています。
- SQLエンジニアエージェント:Snowflake・BigQuery・Databricksへのクエリ実行権限を持ち、SQL生成と実行に特化。メインのアナリストが分析方針を考えている間に、複数の探索クエリを並行実行してデータを取得します。方言変換・クエリ最適化も自律的に処理。
- 統計アナリストエージェント:Pythonの実行環境にアクセスし、SQLエンジニアエージェントが取得したデータに対して統計分析・仮説検定・異常値検出を実行することに特化。「p値と効果量を計算して結論を出す」という判断プロセスをメインの分析と並行して処理します。
- ビジュアライゼーションエージェント:Pythonの実行環境にアクセスし、分析結果のグラフ・ダッシュボード生成に特化。複数のチャートを並行して生成し、HTMLダッシュボードへの組み込みまでを自律的に処理。アクセシビリティ対応のカラーパレット選択・インタラクティブ機能の追加を自動実行。
- QAレビュアーエージェント:完成した分析の方法論・計算・結論の整合性をダブルチェックすることに特化。メインのアナリストが分析を仕上げている間に、並行して検証を進め、共有前に問題点をフィードバック。「分析者自身が気づきにくいバイアス」を第三者視点で検出します。
4要素が連携する全体像—「転換率が落ちた原因を調べて」から経営報告まで
以下は「先月の有料転換率が落ちた原因を調べて、経営層向けレポートを作って」という依頼に対する4要素の連携フローです。
- アナリストが スラッシュコマンド
/data:analyzeに問いを入力 - サブエージェント(SQLエンジニア) が コネクタ(BigQuery) でコホート別転換率・ファネル離脱点・チャネル別データを並行クエリ
- スキル(statistical-analysis) に従い、サブエージェント(統計アナリスト) が前月比の差の有意性をPythonで検定
- スキル(analyze) が複数クエリ結果を統合して原因仮説を整理し、ナラティブを構成
- サブエージェント(ビジュアライゼーション) が スキル(build-dashboard) に従い転換率推移・ファネル図・コホート比較をHTMLダッシュボードとして生成
- サブエージェント(QAレビュアー) が スキル(validate-data) に従い共有前に方法論とデータの整合性を検証
経営層への報告資料が、質問から数十分で完成します。
まとめ:Dataプラグインの構成要素一覧
| 要素 | 数 | 主な内容 |
|---|---|---|
| スキル | 10種(最多) | データ探索・SQL生成・分析実行・統計分析・Pythonビジュアライゼーション・ダッシュボード構築・分析検証・自社データ文脈自己学習 |
| コネクタ | 8種 | Snowflake / Databricks / BigQuery / Hex / Amplitude / Definite / Atlassian |
| スラッシュコマンド | 7種 | /data:write-query /data:analyze /data:explore-data /data:create-viz /data:build-dashboard /data:validate-data |
| サブエージェント | 4種 | SQLエンジニア / 統計アナリスト / ビジュアライゼーション / QAレビュアー |
DataプラグインのソースコードはGitHub(anthropics/knowledge-work-plugins)でオープンソース公開されています。特にdata-context-extractorスキルを使って自社のテーブル定義・メトリクス定義・命名規則を学習させることで、汎用データアナリストAIから「自社のデータを知っているアナリスト」へと進化させることができます。インストールはClaudeデスクトップアプリのCoworkタブ → Plugins から行えます。


コメント